地獄めぐりは「発明」だった〜観光コンテンツはこうしてつくられる〜

みなさんこんにちは。Yumaです。
本日も私の記事をご覧いただきありがとうございます。

シリーズ第3弾の今回は、別府温泉の名物である「別府地獄めぐり」
について、私の体験も交えて書いていきたいと思います。

海地獄にて

バスを降りると、立ち上る湯けむりと独特の硫黄の匂いが私を迎えてくれました。
鮮やかな青色の池、赤い鳥居、そして「地獄」という強烈な名前、どこか非日常で、しかし不思議と整然とした観光体験でした。
次々と“地獄”を巡りながら、私はある違和感を覚えます。
なぜ、この体験はこんなにも完成されているのか?

これは偶然か?

温泉大国である日本。温泉が湧く場所は日本中にどこにでもあります。
しかし、それを観光コンテンツとして成立させている場所はそう多くはないと思います。
さらに、複数の地獄を効率よく巡るルート、バス、ガイド、休憩施設まで整っている。
ここまで整った観光体験が、自然に出来上がるとは考えにくいのではないでしょうか。

結論から言うと、これは偶然ではありません。
この体験は意図的に設計されたものです。
そしてその中心にいたのが油屋熊八でした。

観光地にはテーマがあること

まず特徴的なのが「地獄」という名前です。
古くから地元では地獄という名前で呼ばれておりましたが、温泉の噴気や熱泥は危険な場所であり、さらに、その不気味な雰囲気から近づく人はあまりいませんでした。

しかし、熊八はかつてアメリカで訪れたイエローストーン国立公園の間欠泉が人気観光地だったという事実を知っていました。

「人が近づかないなら、人が来るように仕向ける」

熊八は「地獄」という名称を全面的に押し出し、地獄らしい鬼や、熱を利用した熱帯の動植物を準備しました。

・非日常性
・恐怖と興味
・記憶に残る体験

これは単なる自然現象ではなく、「地獄」という名のもとに「テーマ化」されたコンテンツです。
つまり、自然に意味を与え、人が訪れる理由を作ったということです。

効率的に観光できるということ

次に注目すべきは「巡る(回遊)」という体験です。

別府地獄めぐりは、単体の観光地ではなく、複数のスポットを一つのルートとして設計しています。

さらに、
・定期観光バス
・ガイド
・滞在時間の設計
が組み合わさることで、観光客は「自然に次へ進める導線」が作られています。

この効率化された仕組みによって、訪問者は無意識のうちに複数の地獄を巡り、時間とお金を使う構造になっています。
観光においては、移動そのものが消費行動につながると考えられています。
いわば「移動は消費である」とも言えるでしょう。

体験として刻まれること

各地獄には
・お土産処
・飲食処
・休憩処
が用意されています。
つまり、「見る」だけで終わらず、「観る」つまり、関わる・感じるといった体験として完結する設計になっています。

これは現代でいう
・テーマパーク
・スタジアム
と同じ構造ではないでしょうか?

ここまで見てきたように、地獄めぐりは
・テーマ性
・回遊の効率化
・体験
が組み合わさった観光コンテンツの完成形でした。
つまり、地獄めぐりとは自然を観光コンテンツに変換した設計だったのです。

さらに重要なことは、この別府地獄めぐりを含めて別府温泉が今でも日本の人気観光地であることです。
なぜ、ここまで伝統が守られているのでしょうか?
その答えは「別府温泉日本一」というブランドにあると私は考えています。
次回は、この「日本一」がどのように作られたのかを掘り下げていきます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


シリーズ記事「観光地はどうつくられるのか Season1 別府温泉編」は、以下の図書、ウェブサイトおよび著者のフィールドワークをもとに作成しております。

〈参考文献〉
植松三十里『万事オーライ:別府温泉を日本一にした男』 PHP研究所、2021

〈参考ウェブサイト〉

https://www.beppu-jigoku.com/index.php

https://kamenoibus.com/sightseeing_jigoku